人が訪れたくなる川

「焼けますかねえ?」
夕暮れ時、広瀬橋から川上に向かってカメラを構えていると、60代ほどの男性が声をかけてきました。そのまま立ち話になり、肩を並べて夕焼けを待ちました。
山の端が金色に輝き出し、その数秒後、日はすっかり山に隠れ、空は静かに暗くなっていきました。
「ああ残念」
「ダメでしたね」
夕焼けにはならなかったけれども、一緒に日没を見届けた連帯感も手伝って、私は気持ちよくこの場を後にしました。川風が吹き始め、中州にいた釣り人も岸に戻っていきます。
これまで、入間川で多くの人と出会いました。学生の頃にはここで会ったおじさんと二人でススキの原にカメラを向けました。広瀬神社のフクロウの話をしてくれた人、自慢のカメラを見せてくれた人。土嚢袋いっぱいのクルミをくれたおじさんは元気かな。思い出せばきりがありません。どれも、それぞれがふらっと訪れたときの、偶然の出会いです。
人が訪れたくなる川とはどんな川でしょうか。そこにはたいてい緑があるように思います。草木が伸び花が咲き、鳥がさえずります。夏場には木陰を作り、あたりを清涼にします。
先日、年配の知人が「不老川が工事されてから歩かなくなってしまった」と言っていました。川の工事によって水の流れが変わりましたが、人の流れも変わったようです。